還暦記念の「ざ びぼうろく」THE備忘録 

目にとめてくださり、ありがとうございます。還暦を機に、これまでの想いやこれからのことを毎日書いていきます。

上っ面しか見ていなかったあの頃を猛省します。

シャガ

シャガって美しい花です。

 近所の植物園にボタンの花を見に行ったのですが、一番自分の印象に残ったのは、「シャガ」でした。日の当たらない場所に群生していましたが、美しい光景でした。

 私は大学卒業後、刺しゅうの研究室に残り、F教授と学生の指導を一緒にしていましたが、5月のある日、Fセンセイが大学の中庭に咲いているシャガを摘み取って研究室に持ち帰り、「この花を写生して刺しなさい。」とおっしゃいました。

ずいぶんと地味な花だなあと思いましたが、学生さんは一生懸命写生しています。Fセンセイは他の学生にもシャガを紹介し、大学の中庭まで案内してくださいました。私もついていきましたが、建物に囲まれた日陰の中庭で、大きな樹木の下にシャガはひっそりと咲いていて、「なぜこの花を推薦するのだろう。」とよく理解できないままでした。

その後、学生さんが刺しあげた刺しゅうは繊細で美しい作品となり、Fセンセイも「よく観察したわね。」と賞賛していました。

 今日は華やかなボタンも目にしましたが、たくさんのシャガを見て、F教授の言葉を思い出しました。しゃがんで注意深く見ると、花弁が3枚ずつ同じデザインで、薄青と山吹色、青紫、白とに分けられ、ところどころ斑点模様。シンメトリーな形状にも魅かれました。気がつけば、ボタンよりもたくさん撮影していました。

 今思えば、当時、指導を受けた学生さんはそのときすでにシャガの美しさを知り、作品を仕上げていたのですから、羨ましい限りです。35年前の自分はシャガを上っ面しか見ていなかったわけで(それが若さなのかもしれませんが)、今日は猛省しました。F教授のそばで働けたことを今更ながら感謝します。