裏千家の薄茶点前(うすちゃてまえ)のお稽古で、お道具拝見というものがあります。棗(なつめ・・・抹茶が入っている容器)と抹茶をすくう茶杓(ちゃしゃく)を拝見させていただく作法。
心づくしのお道具を客のために亭主が選んでいるので、それを見せていただくというわけです。茶道って本当に演出の世界だと思います。そもそもの茶室がそういう造りになっているし、掛け軸もお花も、照明まで、細かく考えられているなあ、と稽古するたびに強く感じます。
お道具を見せていただいたら、最後に亭主と正客とでお道具についての問答があります。
まずは棗から。
正客役生徒(以下S)「本日は大切なお道具をありがとうございました。お棗のお形(かたち)は?」
亭主役生徒(以下T)「中棗(ちゅうなつめ)でございます。」
S「お塗りは?」
T「蒔絵、独楽(こま)でございます。」
S「お作(さく)は?」
T「宗哲(そうてつ)でございます。」
次に、茶杓を尋ねます。
S「茶杓のお作(さく)は?」
T「当代お家元でございます。」
S「何かご銘でもございましたら・・・」
そう言われたら、各自で考えて来た季節にふさわしい言葉を答えます。
私の前に亭主をやった生徒は「薫風です。」と答えました。
あ~!先に言われちゃった・・・。
すると先生が「他にも、早苗や早乙女、晴嵐 (せいらん)というのもありますね。」
あ~!早苗も出ちゃったよ・・・。
ヤバい、ヤバい!
次のお点前は私の番です。トイレに行くふりをしてその場を離れ、あわててスマホで検索・・・。5月のご銘で「端午(たんご)」を発見。初孫に五月人形を贈ったばかりだから、うん、これにしよう!
お道具拝見が私の番になり、棗から茶杓の作までは何とか言えました。
「何か、ご銘でも?」
すかさず先ほど用意した(カンニングと呼ぶべきか?)銘を言わなくちゃ!
「端午でございます。」
すると先生が大笑い。
「田舎っぽいわよ~!」
「???」
あ~!もしかして、「田んぼ」に聞こえちゃったんだ!
「先生~、田んぼじゃなくて端午です!初孫に五月人形を贈ったばかりですので。」
それでまた皆で大笑い。何とも和やかなお稽古となりました。