母との施設での面会は、いつもと同じように母の大きなため息から始まりました。
「あのさ、私はいったいいつになったらここ出られるの?」
私は全く反応せず、まずは兄からお土産の説明をしてもらうように仕向けます。
母が好物の立派な梅干し始め、羊羹、飴玉、ひとくちサイズのどら焼きなどなど。なぜかディズニーの袋に洋服が3枚。どれも義姉が見繕ってくれたものばかり。結構な量がテーブルに並びましたが母親は関心を示さず。
兄、やや、凹む…。
私も続けて醤油煎餅と羊羹を披露。羊羹かぶっちゃったので、「榮太郎のだよ!」と強調。少し反応がありましたが、榮太郎作戦も撃沈。
見ると兄は部屋の隅っこに座っています。
オイオイ、離脱しちゃダメ。まだ始まったばかりでしょ。
そこで私は次なる「ひ孫作戦」開始。A 4サイズに印刷してきた長男家族の写真を出し、ひ孫が生まれたことを母に報告しました。母は長男が幼い時に面倒をだいぶ見てくれたので、この作戦は絶対に成功するはず!
写真には長男、お嫁ちゃん、ひ孫の名前も黒マジックで書いてきたのでまずはそこから説明。「みてね」アプリをiPadに映し、たくさんの赤ちゃん写真を見せていたら、おやおやどうでしょう。母が笑顔になってきました。「ひい婆ちゃんなの?私。」
赤ちゃんパワー恐るべし!
そうなるとこっちのペース。夫も立ち上がって母親のそばであれこれ説明し始めました。
「かわいいね〜、かわいいね〜。」と母親が、印刷された赤ちゃんの顔を指で触って何度も愛でています。
「へー、4月生まれなの?一番いい季節に生まれたね。」
五月人形と一緒に写っている写真も見せたら「あら〜立派な兜!いいじゃないの!」
おっ、いいぞ、いいぞ!
私はすかさず、今度は次男と次男が飼っているミニシュナの写真も見せました。母が最初は次男の存在を思い出せずにいたので、少し昔の次男の写真をまず見せて、次男のことを思い出させ、次に最近の次男と犬の写真を見せたら大成功!綾波レイの服を着た犬を笑顔で眺めていました。「犬に服を着せるの?」
するとここで兄が会話に入ってきました。次男の昔の写真は兄宅で撮影したものなので、兄の飼い犬が写っています。兄が犬を飼っていることを母も思い出したようで
「あんたのところの犬は元気かや?」
「元気だよ、老犬だけどね。」
お、母と息子との会話もいい感じ。
そうこうしている内に職員の方がお迎えにみえて、15分間の面会は終わり。最後に我々全員の写真を職員の方に撮影してもらって無事ミッション完了です。
母は「また来てね〜。」と職員さんとたくさんのお土産と共に、自室へ戻って行きました。
やれやれ、無事に15分一本勝負が終わりました。
帰りの車内で兄が
「お袋、やっぱり可哀想だな。家に戻して、俺かお前が一緒に住んでやるのがいいのかもしれないけどなあ。」
はーっ?何言ってんの?そういうの、絶対無理っしょ!
これだから息子ってダメなのよ。
そして、いちいち母親の「帰りたい」ため息につきあっていてはダメなこと、どんどん話題をふって明るい面会時間に努めること、を兄に伝授したのでした。
結局息子というものは母親には弱いってことか。
私の2人の息子はどうなるかなあ?私の面倒みてくれるのかな?
それにしてもAIさん考えてくれたタイトル、笑っちゃいます。