還暦記念の「ざ びぼうろく」THE備忘録 

目にとめてくださり、ありがとうございます。還暦を機に、これまでの想いやこれからのことを毎日書いていきます。

昭和で止まったままの着物人生

帯締め

帯締めの房は重要。房カバーないときはこうやってまとめています。

 ご主人のお仕事の関係で、長期に留守をされているお隣さん。久しぶりに奥様が我が家を訪ねられ、玄関先で立ち話。なんでもご主人はご実家のDIYに夢中で、今回は来られなかったとのこと。ものづくりに魅了されちゃったんですかね~。

 

 実はその奥様とは、8月の旅行先で一緒に藍染めをしてきた仲。

 すっかりお友だちなので、近況報告を兼ねておしゃべりもはずみました。

 

 「来月、初孫の七五三で自分も着物を着ることになったけど、ちょっとわからないことがあるの。」と言われ、その場で説明しましたがちょっと不安な様子。

 「それなら、着付けを一緒にやってみる?」

 「えーっ、いいの?」

 トントン拍子に話が決まり、その日の夜7時からスタートすることになりました。大きな鏡がないということだったので、我が家の姿見と、着物と帯、着付けグッズを抱えて、定刻にお隣をピンポーン!

 

 まず、彼女が着ようと思っている付け下げ(つけさげ、ちょっとフォーマルな和服)と名古屋帯を見せてもらいましたが、アラ還の彼女にはちょっとだけ派手かな?きっとお嫁入り道具なのでしょうね。しかも真っ赤な重ね襟が細かい針目でがっちりと縫い付けられていたので、ますますお若い印象。

 「このまま着ると、結構迫力がある襟元になるので、帯はこの名古屋帯じゃなくて、袋帯の方がいいかもね。」と提案。

 

 「わかった。」

 彼女は奥から袋帯を出してきました。袋帯の方が帯結びは難しくなります。そこで最初にYouTubeの動画で袋帯の二重太鼓の方法を一緒に視聴。

 「じゃあ、着付け練習を始めましょう。私も一緒に隣で着てみるね。」

 

 肌着類を身に着け、次に長襦袢(じゅばん)を着るというときに、彼女の長襦袢を見ると、何と半襟が付いていない。

 

 えーっ!?

 着物のすぐ下に着る長襦袢は、通常は元々の襟に半襟を縫い付けて使うのです。

 

 これから半襟をつけなければこの先の行程には進めない、まさかのロスタイム!

 

 「これ買ってあるの。」と嬉しそうに彼女は3枚の半襟を紹介してくれました。

 その1 薄茶色の地に、白と緑と金色の花模様の刺しゅう襟・・・これは豪華版。成人式とかで見かけますね。今回は初孫が主役の七五三。う~ん、どうかなあ?

 

 その2 オフホワイトの地模様タイプ・・・落ち着いた雰囲気に、ちょっとだけおしゃれ感あり。

 

 その3 塩瀬風の白襟・・・これは間違いないタイプ。定番中の定番。

 

 本人は刺しゅう襟を希望していたのですが、さすがに真っ赤な重ね襟にこのゴージャスな刺しゅう襟は、おばあちゃんが目立ち過ぎやしないか?

 私の薦めで地模様の襟をチョイス。私が縫い付けることになりましたが、この家には裁縫箱がない。大急ぎで自宅に裁縫箱を取りに行きました。

 襟芯も入れ、半襟をつけ終えて、真っ赤な重ね襟のある付け下げと長襦袢の襟元を並べて、「こんな感じになるよ。」と見せたところ、本人が「重ね襟がない方がすっきりしていて良い。」ということになり、次に私は、細かい針目で縫い付けられている重ね襟をすべて外す作業に取り掛かることになりました。

 重ね襟を取り外した付け下げと長襦袢と、もう一度、襟同志を並べてみると、地模様の半襟が引き立ってとてもシックな印象。

 「これ、すごくいい感じ!」と本人も襟元を絶賛。

 洋服とはまた違う、和服ならではの美しさがわかってもらえたようで、私も嬉しくなりました。

 

 それにしても、ロスタイム長すぎた!

 ふー、でもこれで、やっと先に進めます。(進めるはずです!)

 

 彼女の着付けグッズはやや古くなっていて、ゴム状のものは伸び切っているし、ひも類も細くて、着なれない彼女には扱いづらいものでした。私が持って来た現役の今どきのグッズを貸してあげると、「これ、使いやすい!」と大喜び。どうやら彼女の着物人生は、若い時に通った教室の教えのままで止まっているようです。

 

 その後、付け下げを着て、二重太鼓の帯も締めて、着付けは無事に完了。途中で彼女は何枚も写真を撮っているので、今後また自主練に励むそう。 

 

 隣とはいえ、家の中まではそうそう入りません。せっかく来たのだからと、ついでにお宅拝見をさせてもらい、最後に時計を見たら何と夜11時になっていました。4時間も滞在していたとは・・・。

 

 私が帰り支度をしていると、

 「今日はいろいろな用具を貸してくれてありがとう。私の着付けは昭和で止まっているということがよーくわかったよ!これから、頑張って練習するね。今日はありがとう!」と彼女に言われました。

 

 「この努力が実を結んで、来月の初孫さんとの七五三が無事うまくいきますように。時間はまだあるから練習続けてね。着付けは頭で考えて着るんじゃなくて、手で覚えていくものらしいよ。」と、私。

 

 頑張れ、Kちゃん!