還暦記念の「ざ びぼうろく」THE備忘録 

目にとめてくださり、ありがとうございます。還暦を機に、これまでの想いやこれからのことを毎日書いていきます。

羊羹を寝かせてはいけないという教え。

刺しゅう額

6月の刺しゅう

 6月の玄関には紫陽花とこの刺しゅうをよく飾ります。この作品を刺したのは35年くらい前。

 勤務していた大学の研究室の教授のご専門が刺しゅうだったので、来る日も来る日も教授の指導を受けながら、色々な作品を刺していました。この図案は教授のオリジナルで、当時はすでに70代後半の先生でしたが、かわいいものが大好きな方でした。学生時代から通算すると6年間ご指導を受けましたが、ご主人様を亡くされてから、先生が少しずつ体調を崩されてしまわれたことを今でも思い出すときがあります。

 先生は東京生まれ東京育ち。よく昭和初期のお話しをしてくださいました。東京の冬はとても寒くて雪が時々降ったことや、ベったら漬の市がたってにぎやかだったこと、人力車に乗ると自分はいつも酔ってしまって辛かったこと、2.26事件の時には炊き出しをして援護したことなどなど、私の知らないことばかり。

 また、先生は煙草好き。研究室におみえになると、必ずお茶とお菓子と、愛用の灰皿をお出ししました。お菓子はだいたい先生のおもたせが多かったように記憶しています。甘いものは食べ過ぎると良くない、と常々おっしゃっていたので、ある日虎屋の羊羹を薄く切ってお出ししたら「羊羹というものは自立する厚さに切るものだ。しかも2切れ!」と注意され、妙に納得したこともありました。今でも懐かしく思い出します。

 20代の時に先生から学んだ数々のことは今でも大切な宝物です。私も先生のように、若い世代に何かを残していければいいのですが…、まだまだ程遠い気がします。