還暦記念の「ざ びぼうろく」THE備忘録 

目にとめてくださり、ありがとうございます。還暦を機に、これまでの想いやこれからのことを毎日書いていきます。

ICTの波に溺れないように必死だった頃のお話。

カレンダー

今年もあと5枚ですか・・・

 元勤務校で同僚だった女性とランチの待ち合わせをしました。4か月前までは、平日にほぼ毎日顔をあわせていたのに、なんだかちょっと懐かしい・・・。

 

 私のような毒舌タイプが1人減って、さぞ平和な職場になったであろうと思いきや、全く違うタイプの困ったさんが複数人異動してきたらしく、人間関係のぎくしゃく話が出て来るわ、出て来るわ。いちいち「え~っ?!」と相づちを打つ私。おしゃれな会席ランチをいただきながらも、彼女からの情報(愚痴?)に耳を傾けます。個室を予約しておいて正解でしたね。

 

 インターハイ出場経験のある若い部活動顧問が「教え方が古くて困るんですよ。」と、今年度加わったベテラン顧問の指導内容に不満気だという話を聞いて、昔の自分を思い出しました。

 

 今から20年ほど前、40歳の私と15歳年上の先輩教師とで、文部科学省後援(昔は認定だったんですけどね~)全国高等学校家庭科被服製作技術検定・食物調理技術検定を家庭科の授業でどう扱うかで話し合いました。

 家庭科の専門を学ぶ家政科高校ならともかく、普通科高校でそもそも検定を受検させる必要があるのだろうか、というのが私の考えでした。その頃「総合的な学習の時間」(今は「探求」とも言います。)や、「情報」などの新しい教科が加わり、家庭科はそのあおりを受け、単位数が4単位から2単位に減るのが必至という未来予想図もあったからです。

 先輩は家政科設置校で何十年も検定を指導された方で、普通科高校でも4単位の授業実践がしみついています。私は普通科高校での勤務のみで、家庭科以外に新教科「情報」の免許も取得したという教師。2人はそもそもの背景からして違いました。

 

 先輩「検定の練習を数時間かけて授業で実施して、合格者を1人でも増やしましょう。」

 私「検定というものは本人が努力したその力量を試すもの。授業で何時間も練習させて合格者を増やす、というのはいかがなものでしょうか。」

 私は検定の説明と練習は2時間で終え、あとは各自が自宅で練習して来ればよいという考え方でした。

先輩は「そうね。そういう考え方もあるわね。」と静かにおっしゃっていたように記憶しています。

 

 当時学校現場にICTの波がドド~ンと押し寄せてきて(ザブ~ンとかではない!)、私はその波に乗るべく必死でした。先輩は波に乗るどころか岸から離れず、昔ながらの悠長なやり方を踏襲しているように見え、私は先輩に少し腹も立てていました。結局、私の方針が採用されましたが、数少ない合格者に先輩はがっかりされていたと思います。

 

 たくさん練習をみてあげて1人でも多くの生徒を合格させてあげたい。

 それはきっと彼らの自信につながるから。

 

 先輩の愛情あふれる指導方針は、家庭科単位数減とデジタル化の波に飲み込まれた感があります。先輩はほどなくして定年退職となり学校を去られました。

 

 その後もその先輩とはずっとおつきあいがあり、現在では私に茶道を教えてくださっています。当時よりも若々しく生き生きと、そして昔と変わらず愛情たっぷりでしかも優雅に指導してくださいます。

 私は若き日々を猛省しつつ、先生のようにふるまえたらとお稽古を続けています。